前回、バリアフリー(BF)とユニバーサルデザイン(UD)の関係についてお伝えしました。
ユニバーサルデザイン(以下UD)を考える上で、ポイントはいくつかありますが、その一つに「比較」の考え方があります。
壁に取り付けられた室内照明のスイッチ。
家庭や職場などで一般的に使われています。最近では、大きな押しボタンのスイッチが登場してきました。
従来からある一般的なスイッチと、押す部分が大きくなったスイッチでは、押す部分が大きくなっているスイッチの方がUDなスイッチといえます。
これまでのスイッチに対し、押す部分が非常に大きくなっているスイッチは、小さなスイッチでは操作が難しかった人も、押して操作することができるようになります。
たとえば、
指先を動かすことが得意でない人も、手全体で押すことができます。
また、両手に荷物を持ったときにも、肩でスイッチを押すことができるようになります。
つまり、
従来からある一般的なスイッチよりも、大きな押しボタンのスイッチのほうが、よりたくさんの人が利用できるので、UDといえます。
では、このような「大きな押しボタンのスイッチ」は完全なUDと呼べるのでしょうか。
スイッチに手の届かない人や、上半身を全く動かすことができない人にとっては、このスイッチでも使うことができません。
このように使えない人も必ず残ります。
でも操作の必要のない「人感センサーのスイッチ」があれば、その人たちも使えるようになり、よりUDであるといえます。
その場合でも、寝たきりの人は使えません。つまり100%完全なユニバーサルデザインというものは存在しないのです。
以前、室内用照明器具は、照明器具自体に設けられたスイッチを操作するタイプが多くありました。
これだと照明器具に手が届かない人や、指先の複雑な動作を行なうことができない人には、照明器具を点けたり消したりすることができません。
このようなスイッチと比べれば、最初にとりあげた一般的な壁に取り付けてあるスイッチのほうが、小柄な人でも子どもでも操作できるので、よりUDであると
いうことができます。
このように、「これが完璧なUDだ」と呼べるようなものはなく、UDは、あくまでも「比較」の考え方なのです。
現在一般的に普及している製品・サービスと比較し、使える人・使いやすい人が増えているかどうかで、UDかどうかがきまります。
ホームヘルパー1級の資格を持ち、2006年のたんとぽけっとの介護アドバイザーとして、豊富な在宅介護経験と介護職経験から高齢者と心を通わせるためのヒントを伝授。