高齢になると、様々な視覚機能が低下します。
暗くなった時に開く瞳孔の大きさも、加齢とともに小さくなり、光を取り込みにくくなって、暗さに慣れるまでの時間も長くなります。
また、眼球の水晶体が濁ってしだいに黄色く変化し、青い光を認識しにくくなるため、青と黒を見間違えたり、ガスの青い炎が見えにくくなります。
それは、あたかも黄色フィルターを通して見たように物の色調が変化して見えます。
そしてこの青い炎が、高齢者には実際より小さく見えるということが分かってきました。
朝日新聞(2007年7月8日付)の記事によると、コンロの炎の見え方を調査したところ、80歳の人に見える炎の明るさは、若年者より2~3割落ちることが分かったそうです。
さらにガスレンジの青い炎は黄変化した目には灰色に近くなり見えにくく、消したと勘違いしそうで非常に危険です。
調理時に炎の大きさを見誤ってやけどしたり、炎が見えにくいので、衣服を燃やしたりしないよう注意が必要です。
また、バーナーの火力が強く、炎が鍋底から外側にはみ出したまま使われることが着火の原因になる可能性もありそうです。
コンロを使う際は、見た目をうのみにせず、袖口を近づけないよう注意した方がよさそうです。
消し忘れなどのうっかりミスを防ぐとともに、炎の見えにくさへの配慮も必要になるでしょう。
炎の見えにくさが原因の事故も、実際は起きていると思われます。
- 野菜の色味の変化から、鮮度を見誤ってしまう
- 黄色バックに赤文字で表示された洗剤や、薬の注意書きが、見にくく感じたことがある
- 駅施設や公共トイレの案内表示が見にくく感じたことがある
- 説明書等の「背景色と文字色の組み合わせ」によって、たまに読みづらい
混ぜるな!危険! | ←混ぜるな!危険!と書いてありますが楽に読めますか? |
鮮やかな色も若者に比べると、やや鈍く見えるようになります。
家庭内の階段の段差や廊下の手すり、浴室の補助器具などは、周りと明るさのコントラストをつけた色にすると安心です。照明を明るくすれば、色の識別力は随分上がります。
ただ、高齢者に明るさとまぶしさの境は難しく、明るければいいというわけではありません。
水晶体が白く濁る白内障の人は、眼球で光が乱反射し、斜め方向からの光もまぶしく感じるからです。光源にカバーをつけたり、補助照明を必要な時だけ使ったりする工夫が必要です。
ホームヘルパー1級の資格を持ち、2006年のたんとぽけっとの介護アドバイザーとして、豊富な在宅介護経験と介護職経験から高齢者と心を通わせるためのヒントを伝授。