コラム おばあちゃんのつぶやき④

認知症のおばあちゃん

田舎暮らしのお母さんの介護のお話しです。
今回は、田舎から連れてきたおばあちゃんが帰りたくなったお話です。

田舎暮らしから都会の生活へ、一人暮らしから家族のいる生活へ、友人、隣人のいる生活から誰もいない生活へ、使い慣れた道具、設備から初めての環境へ、この変化は高齢者にとってどんな心の変化をもたらすのでしょう。

私にも確実におとずれる「老い」、一人のおばあさんを通して「気持ち(心)」をしっかり見つめてみようと思います。おばあさんとお嫁さんの言葉のやり取りを会話形式で書いていますので台詞のように声を出して読んでみてください。時々私自身のコメントも入れていきたいと思います。

おばあちゃん
今朝は良いお天気で気持ちが良いねーさて!出かけようかね。

財布は持ったし、荷物は後で送ってもらえば良いからとりあえず一人で帰ろう。
駅はどっちだろう・・・確かこっちの方から来たような気がするねー

息子は仕事で忙しいようだし、嫁に迷惑はかけたくないからね。
駅は近いと聞いていたけどまだかね・・・今、何時だろう。
お腹がすいてきたね・・・

都会は怖い人が多いとテレビで言ってたから気をつけないとね。あっ!おまわりさんだ。駅はどっちか聞いてみようかね。

何で私の事、知ってるのかな?親切にパトカーに乗せてくれて家まで送ってくれるんだってさ・・・
沢山歩いてちょっと疲れたから乗せてもらう事にしようかね。

エッ!もう着いたの?あら!ここは私の家じゃないよ。いやだね・・・また息子の家に来ちゃった。

コメント
ちょっとお出かけしたと思っていたおばあちゃんがお昼にも帰らないのできっと家族の方はご心配だったのでしょう。警察に連絡をしていたので保護して下さったと思います。ご本人は田舎へ帰りたいと思い、出かけたのですが見知らぬ土地で分からなくなってしまったのでしょう。
でも周囲から見たら「徘徊」と思われてしまうという事もありますね。ご本人の気持ちをゆっくり聴いてみると問題が解決する時もあります。
おばあちゃん
やっと駅に着いたよ。

この間は駅までこられなかったからね・・・よかった。

えーと、切符はどこで買うのかしら・・・機械ばかり並んでるよ。

ご親切にありがたいね・・・切符を買ってくれたよ。
あら!どうして中には入れないの?

切符は誰が見るのかしら? 都会は難しいね・・・

駅員さんのいるほうから入ろうかね。

田舎の駅は良いね・・・誰もが顔見知りで声をかけてくれる。
階段もないし、電車も混んでないし・・・

コメント
何も知らない親切な他人に助けられて田舎の駅へと向かっています。
息子家族に不満があったわけではないと思います。

唯、ここには自分の居場所が見つからない、楽しみが無い、
残してきた田舎の家、畑が気になり、友人が懐かしくて、我慢できなくなっての行動と思います。

世話してくれたお嫁さんにはこれ以上迷惑をかけたくないという気持ちもあります。
今、おばあさんの目はいきいきとし、心ははずんでいます。

息子家族は大騒ぎになっていると思います。
特にお嫁さんはどんな気持ちでしょう。

お嫁さん
家の中で一番住み心地の良い部屋にいて、食事も部屋まで運び、掃除も洗濯もして、毎日何もしないでテレビを見ているのに、
これ以上何が不満なの。

と夫に訴えています。

夫(息子)も母親のわがままと思っています。そして「ボケたかな」と頭の中をちらっとよぎりました。

認知症おばあちゃんの庭

コラム おばあちゃんのつぶやき⑤

2019.01.05



ABOUTこの記事をかいた人

ホームヘルパー1級の資格を持ち、2006年のたんとぽけっとの介護アドバイザーとして、豊富な在宅介護経験と介護職経験から高齢者と心を通わせるためのヒントを伝授。